1 マインドフルネスとは
「マインドフルネス」という言葉を聞いたことあるでしょうか。YouTubeで検索するとたくさんの動画が出てきますし、ストレス対処やうつ病などの精神疾患の心理療法のひとつとして使われています。
私はあまり専門用語は好きではないので、くだけた感じでマインドフルネスについてお話ししてみようかと思います。
マインドフルネスのベースは仏教の「禅」です。それが海外に渡りマインドフルネスとして広まり、逆輸入する形で日本へ入ってきました。日本マインドフルネス学会の定義では、「今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること」とされています。
私たちの注意・意識はそこにいるだけで未来や過去やあっちこっちに向いていますが、この注意・意識を意図的に呼吸を通して「今、ここ」に向けます。
私の話になりますが、初めて「今」という概念を意識したのは小学生の頃、地域センターの図書館で、ミヒャエル・エンデの『モモ』に出会った時かなと思います。全部は読めなかったのですが、ある1シーンが大人になっても覚えているくらい印象的でした。
※TSUMUGUカウンセラー中西の『モモ』のイメージイラストです
印象に残っているのは、マイスター・ホラというと登場人物が、モモにクイズを出すシーンです。詳しくは本を読んでもらえたらと思いますが、「今」は本当に一瞬ですぐに過ぎ去ってしまうんだなぁと思った記憶があります。
「今」をつかまえるのはとても大変なのですが、マインドフルネスを行っていると、その「今」をしっかりと感じられる感覚があります。
また、マインドフルネスは「あるがまま」の状態をそのまま観察するということをしますが、私が「あるがまま」を初めて意識したのは、元XJapanのhideさんの『MISERY』です。痛みも悲しみも「全て受け止めるよ そのまま」という歌詞があって、痛みや悲しみは受け入れ難いけれど、全てそのままま受け止めるというのはすごいなぁ・・・そんな風になれたらいいなと思いました。また、ある経験をした時に「痛いものは痛い」と人から言われ、いくらネガティブな感覚が嫌で否定してもなくならないんだな、と思ったことも、マインドフルネスをすんなり受け入れる下地になっていたのかなと思います。ディズニーの『アナと雪の女王』でも、「let it go」が「ありのまま」と訳されていますね。「let it go」は“手放す”という意味もあるのですが、“手放す”というのは、マインドフルネスでも禅でも大事な概念です。
ディズニーの『インサイド・ヘッド』では、“カナシミ”の感情がネガティブなものとして扱われていますが ( 最後に悲しみの気持ちも大事だという描写があります ) 、そんな風に“泣いたらダメ”“泣くな”と言われたことがある方もいらっしゃるかもしれません。マインドフルネスでは、悲しんで泣くことをダメだ、と否定するのではなく、“泣くくらい悲しいんだよね”“泣きたいんだな”とそのまま受け止めます。
マインドフルネスとは、「今」の気持ちや考え、感覚をそのまま評価も判断も否定もせずにありのまま呼吸とともに観察する方法となんとなくでもわかってもらえたらいいなと思います。
2 doing modeとbeing mode
普段、私たちの脳は生きて行くため、問題解決のために「doing mode ( することモード )」で動いています。doing modeの時は、過去や未来・・・あっちこっちに注意・意識がさまよっています。この時、脳は物事を分析したり計画を立てたりするために動いています。これも大事な脳の働きなのですが、この働きがネガティブな考えや感情をぐるぐる反芻 ( はんすう ) する方に発揮されると、しんどくなってしまったりします。また、未来の目標に注意・意識が向いているので、今の自分を否定することになったり、目標達成するまで疲れていても限界まで動き続けてしまう「driven-doing mode ( 駆り立てられ-することモード )」になることもあります。車の運転に例えると、ずーっとアクセルを踏んでいる状態ですね。走ることに例えると、ずーっと全速力で走っているという感じでしょうか。ずーっと全速力で走っているとどうなるか・・・想像つくのではないかなと思います。
「being mode ( あることモード )」は、意識的に意図的に「今」に注意・意識を向けます。評価や価値判断や分析よりも、「今感じている体験」を重視します。
この絵を見て何を思いますか?
「りんごだ」「そういえば今朝りんご食べたな」「りんご好き」「りんごあんまり好きじゃない」
・・・などでしょうか。