はじめに
HSP ( Highly Sensitive Person ) という言葉を聞いたことはあるでしょうか?
HSPとは、刺激に対する感受性が強い人たちのことを指します。
著名人の方でご自身をHSPとおっしゃっている方々もいますし、たくさんの書籍が出版されているので、ご存知の方もいらっしゃるのではないかなと思います。
今回は、HSPについてお話ししようと思います。
- HSPとは?
- HSPの特性:課題と強み
- HSPの特性に対する対策
- HSPの人々へのサポート
- おわりに
1. HSPとは?
HSPはElaine.N.Aron ( エレイン・N・アーロン ) 博士により提唱された概念です。ネットでHSPのチェックリストがあり、気軽にHSPの傾向があるかどうかチェックすることができますが、診断名ではないというところが注意点です。“自分はHSPだ”というよりは、“感受性が強い・刺激に敏感な特性がある ( かもしれない ) ”くらいの捉え方が丁度良いかと思います。
ちなみに繊細で敏感な特性を持つこどもをHSC ( Highly Sensitive Child ) といいます。
日本では5人に1人、約20%の人がHSPの特性を持つと言われています。
意外と多いんですね!
1クラス30人のクラスに6人いる計算ですね。HSPの人は理解してもらいたい相手になかなか理解してもらえず苦しいこともあるようですが、この割合でHSPの人がいるとすると、探せば理解してくれる人もいそうですね。
HSPは診断名ではないので、病院で“あなたはHSPです”と言われることはありません。HSPという概念に対して否定的な意見をお持ちの専門家もいます。ただ、“HSPなのではないか”と思ったり、刺激への敏感さについて調べていたらHSPにたどりついた・・・ということは、“困っている”ということは確かなので、HSPかどうかは言及できないとしても、その方の困り感には耳を傾ける必要があると思います。
私としては、これまで繊細さ・敏感さによって辛い思いをしていた人々が、それをHSPという短い言葉で表現できるようになったのは良い点かなと思います。HSPという言葉をどう使うか、というところが課題だと思います。
2. HSPの特性
HSPの特性としては大まかに4つ挙げられます。
D ( Depth of processing ):処理の深さ
O ( being easily Overstimulated ):過剰に刺激を受けやすい
E ( being both Emotionally reactive generally and having high Empathy in particular ):感情の反応の強さ/共感性の高さ
S ( being aware of Subtle Stimuli ):ささいな刺激の察知
これは例えば日常生活ではどんな風に表れるんですか??
D ( 処理の深さ ) だと、物事について他の人が考えないようなところまでじっくり徹底的に考えるという風に表れます。その結果、周りの人よりも行動や決断が遅れることもあるかもしれません。他の人が考えないようなアイディアが浮かぶこともあるかもしれませんね。“思慮の深さ”と捉えると良いかと思います。
O ( 過剰に刺激を受けやすい ) だと、明るい照明や太陽の光をとてもまぶしく感じて目を開けていられなかったり、柔軟剤や香水の香りで具合が悪くなったり、騒々しい場所だとすごく疲れてしまったり・・・という五感に関することで困り感を感じている方が多いです。五感だけでなく、言葉も強い刺激となる方もいます。ただ、好きな刺激だと、周りの人が得られる以上のポジティブな感覚・気持ちを感じられたりするので、悪い事ばかりではありません^ ^
E ( 感情の反応の強さ/共感性の高さ )は、相手の様子や気持ちをよく考え、相手を思いやるという風に表れます。自分には直接関係のないニュースで涙したり、動物の気持ちにまで共感する方もいらっしゃるようです。大事な人が嬉しい気持ちになっている時は、一緒に嬉しい気持ちになることもできそうですね。
S ( ささいな刺激の察知 ) だと、人や場所などの周囲のささいな違いに気付くという形で現れます。家具の配置が変わったり、相手の表情や仕草、声のトーンがいつもとは違う・・・というようなことに気づけたりします。
Oの特性があると、日常生活の中での刺激が強すぎて辛い思いをする場合があるのですが、強みとなる場合もあるので、強みとして捉えられると、自信を失わずにすむかもしれません。芸術を追求できたり、対人援助職でHSPの特性を発揮できたり・・・HSPの特性を持つ人が生き生きと過ごせる場所はきっとあると思います。
3.HSPの特性に対する対策
強みになるとはいえ、繊細で敏感な人たちが日常生活を送るためには、やはり丸腰では周囲の刺激に圧倒されてしまって苦しくなることがあります。HSPの特性がある人の中でも、どんな刺激に圧倒されやすいか、どんな刺激なら大丈夫か、というのは違うので、自分がどんな刺激が苦手なのかということを知ることがまず大事です。
・視覚:照明の明るさ/太陽の明るさ/PCの明るさ/白い紙/雑然とした部屋・店/色・・・etc.
・聴覚:TVの音/人の話し声/休み時間のザワザワしている環境/車のクラクション/工事の音/花火/掃除機・・・etc.
・嗅覚:香水/柔軟剤/新しい建物のにおい/食べ物のにおい・・・etc.
・触覚:洋服のタグ/毛糸などの素材/ベタベタした感じ/髪の毛が当たる感じ・・・etc.
・味覚:嫌いな食べ物/食器 ( 金属の味がするなど ) ・・・etc.
・言葉:強い言葉・・・etc.
・痛み:注射/耳かき/人とぶつかる/怪我・・・etc.
そう考えると、日常生活には刺激だらけですね・・・
そうですね、刺激だらけです。さらに、HSPの特性が少ない人よりも刺激を強く感じているので、疲れも人より感じやすいです。疲れてしまわないように日頃から対策をしておくことが大事ですね^ ^
以下に、対策の一例を挙げていますので、ご自身に合うものがあれば使ってみてもらえたらと思います。
・視覚:サングラスをかける/ブルーライトカットの眼鏡をかける/一日の多くを過ごす場所にはなるべく物を置かない
・聴覚:ノイズキャンセリングのイヤフォンをつける/耳栓をする/静かな場所で過ごす
・嗅覚:マスクに好きな香りをつけておく
・触覚:タグを切る/好きな手触りのものを持っておく
・味覚:マイカトラリーを持っておく
・言葉:他の人の意見を聞く/気持ちを切り替える方法を持っておく
・痛み:好きな刺激に注意を向ける
対策をしても100%防げるというわけではありませんが、対策でうまくいくこともありますし、うまくいったことによって自信に繋がることもあります。また、苦手な刺激への対策だけでなく、時折静かな場所、落ち着ける場所で“情報のデトックス”をすることもおすすめです。対策をしたり、周りの人に伝えたりしても辛さが変わらない場合は、無理をしないでいい環境を探すことも大事です。
周りの人に繊細さ・敏感さがあることを伝える際には、自分でも対策をしている ( けれど対策が追い付かないことがある ) こと、どんな風に対応してもらえたら良いかを具体的に示して、その対応が可能なのかどうかを確認する、という方法が良いかと個人的には思います ( お願いするばかりではなく、相手の状況にも配慮する ) 。それでも必ず対応してもらえる、理解してもらえるというわけではないので、方法を尽くしても辛いという場合は、繰り返しになりますが環境を変えることも選択肢のひとつとして持っていて良いかと思います。
4.HSPの人々へのサポート
身近な人から、「自分はHSPの特性があって」と言われたらどうしたらいい?
HSPという概念が広まっているので、このように相談を受けることもあるかもしれませんね。HSPの特性があるとすれば、相談するまでにたくさん考えて考えて考えた上での相談なのではないかと思います。ですので、まずは否定せずに話を聞いていただけたらと思います。「わがままだ」「病気なのでは?」「考えすぎ」「気のせい」・・・このように言われてさらに辛い思いをしている方々も多いです。安心できる環境に身を置くことができれば、繊細・敏感という特性をポジティブな方向で発揮することができますので、どんなことで困っていて、どんな対応をしたら良いかや今の状況でどこまでなら対応できるかを話し合っていただけたらと思います。対応に迷ったり、疲れたりした場合は、あなた自身がサポートを受けることも考えてください^ ^
目を開けていられないくらいギラギラした太陽が目に入るところにいるとしたら?・・・それが卒業・退職まで続くとしたら?
嫌いな音が爆音で流れていたら?・・・それが卒業・退職まで続くとしたら?
ものすごい悪臭の中にいるとしたら?・・・それが卒業・退職まで続くとしたら?
びしょ濡れの服を一日中着ていなければいけないとしたら?・・・それが卒業・退職まで続くとしたら?
食事の度に吐くほど嫌いな食べ物を出されたら?・・・それが卒業・退職まで続くとしたら?
酷い言葉を言われたら?・・・それが卒業・退職まで続くとしたら?
刺されるような痛みを感じるとしたら?・・・それが卒業・退職まで続くとしたら?
あなたが感じる数倍の刺激を感じている人がいることを想像してみてもらえたら・・・「わがまま」「気のせい」とは言えないのではないかなと思います。
5. おわりに
人が感じている感覚は人それぞれ違います。繊細・敏感な人が感じている刺激を、そうでない人がありありと感じることはできないように、繊細・敏感な人がそうでない人の感覚を感じることはできません。“相手と自分は違う”ということを知っておき、理解できなくても理解しようとする態度がお互いに必要なのかもしれませんね。とはいえ理解できなくてもそれは仕方のないことだと思いますので、その場合は離れるという選択肢も大事です。
繊細さ・敏感さがあるかどうかに限らず、自分の常識を相手に当てはめずにお互いを尊重しながら話し合うことができたら・・・というのが私の個人的な願いです^ ^